みなさんは入院したことはあるだろうか。入院すると費用がどのくらいかかるか気になる方も多いと思う。
また、個室にするのか、大部屋にするのか。個室の方が落ち着けるけど公的保険ではカバーされていないため、自身で何かの保険に入っていないと追加で費用がかかる。
しかし、場合によっては払わなくても良いこともあるため、知識として知っておきたい。(もちろん、基本的には払う必要があるものなので無理に拒否してはいけないが、たまに本来必要ではないのに請求されることもあるので、しっかり知識として身に着けておこう。)
まとめは上記の通りだが、少し細かく解説していこうと思う。
差額ベッド代とは
まず、そもそも「差額ベッド代」とは何かについて説明する。「差額ベッド代」言われますが、正式には『「特別療養環境室」を使用するにあたって別途負担が必要な費用』である。
病院に入院すると基本的には5人以上が1部屋で寝泊まりするような大部屋で入院することになるが、どんな人と一緒の部屋になるか分からなかったり、同室の人によらず一人や少人数が良いという人も少なくないだろう。
そんな時に利用する「特別療養環境室」、つまり個室は4人以下の部屋から別途料金が発生する。部屋の使用料は、特に決められたものはなく、病院の方針によって設備の充実度も異なるし、金額も大きく異なる。
一応相場として、令和元年7月1日現在の平均を示す。(引用元:中央社会保険医療協議会 第466回総会の中で示された「主な選定療養に係る報告状況」を参考にしているため、気になる方は表の下のリンク先も見ていただければと思う)
部屋の大きさ | 1日当たりの費用(推計平均値) |
1人部屋 | 8,018円 |
2人部屋 | 3,044円 |
3人部屋 | 2,812円 |
4人部屋 | 2,562円 |
全体の平均 | 6,354円 |
最低額~最高額 | 50円~378,000円 |
引用元:
中央社会保険医療協議会 第466回総会(総-7-2):https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000212500_00081.html
資料URL:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000672469.pdf
最高額は、最早ホテルレベルの個室というのも世の中に存在するため、こういう世界もあるのかというレベルで普通の人は使うことはないと思うが、そうでなくても個室を利用すると平均で1日に6,000円近くかかるのが現実としてある。
例えば2週間入院したとした場合、4人部屋でもそれだけで35,000円程度(=2,562円×14日)かかるし、1人部屋を選んだ場合は部屋代だけで112,000円程度(=8,018円×14日)もかかってしまう。
入院するということは当然体調が悪いということであり、そんな体調が悪い中で説明されたら個室が良いと思うだろうし、こんなにかかるとかまで考えが及ばずに後で揉めるケースも少なくない様だ。しっかり認識した上で、それでもお金がかかっても個室が良いという意思があれば問題ないが、急に判断を迫られても判断できるように、元気な時に知識として入れておきたいところである。
ベッド代はいくらなのか
前項ではおおよそどのくらいが相場なのかを説明したが、やはり病院によってその費用は異なる。病院によって金額が異なるため、具体的にいくらだということはここでは説明できないが、差額ベッド代については以下のような規定があるため、必ず病院の掲示物の確認や説明を聞くようにしよう。
・分かりやすい掲示(ベッドの数や場所、料金など)
・明確かつ懇切丁寧な説明を患者に行う
・患者同意の確認(料金等を明示した文書に患者さん側の署名を受ける)
「分かりやすい」とか、「丁寧な説明」とされているが、絶対に分かりにくいと思う。事前にそういうものがあるという知識を持っているのとそうでないのではこれらに対する感度が変わってくるため、ぜひ知っておいてもらいたい。
令和2年3月5日に出された厚生労働省からの通知のリンクを以下に掲載するが、特に必要な事項を抜粋して解説する。
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/19575/0305.pdf
医療機関が患者に部屋代を請求できない(患者が負担する必要がない)事例
さて、差額ベッド代がかなりの金額になることは先に説明したが、個室を使ったんだから費用負担するのは当たり前なんだけど、たまたま病院側が大部屋がいっぱいだから病院から個室に入ることを依頼されるという様な場合もある。
そんな時にも高額な部屋代を支払わなければならないのか。そういった疑問を持った人もいるだろう。この項目では、病院が差額ベッド代を請求できない(患者が支払う必要がない)パターンもあるため、それらの事例を挙げていく。
もし自分や家族が入院することになって、これらの事例に当てはまる場合はしっかり病院側に伝えるようにすることで、差額ベッド代がかからなくなるためぜひ知っておいていただきたい。(知らないと、請求されるがまま支払うということもありうる。)
同意書による患者が希望したという確認を行っていない場合
個室利用に際しては、同意書によって患者が”自ら”希望したことが確認が必要である。これは後でも説明するが、特に重要のため知っておいていただきたい。
この規定があることから、同意書は「医師の説明を了承した」という形ではなく、「私(患者)が希望します」という形式になっている。
ちなみに、それ以外には単純に同意書の不備で、個室の料金の記載がなかったり、患者の署名がなかったりした場合も確認できていないということになる。
患者本人について治療上個室に入る必要がある場合
これは、治療する上で個室でなければならない理由があって、仮に患者が大部屋を希望しても個室にせざるを得ないような場合は、患者の意思ではないため費用請求できないとなっている。
これについては、例もしっかり記載されているため、少しかみ砕いて記載する。
・救急患者、術後患者などで病状が重篤なため安静を必要とする場合や、常時監視・適時適切な看護及び介助を必要とする場合
・免疫力が低下して感染症にかかる可能性がある場合
・集中治療や著しい身体的・精神的苦痛を和らげる必要のある終末期の場合
・後天性免疫不全症候群の病原体に感染している患者
・クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
※ただし、患者が通常の個室よりもグレードの高い個室を希望した場合を除く。
病院の管理上必要性があり個室に入院させた場合で、実質的に患者の選択ではない場合
これも病院側の都合であり、患者の意思ではない場合ということである。これいについても例が記載されているため、いかにかみ砕いてみる。
・MRSA等に感染している患者で、他の入院患者の院内感染を防止するために実質的に患者の選択によらず主治医が入院させたと認められる場合
・大部屋が満室で個室しか空いておらず、患者が大部屋を希望しても個室となった場合
ちなみに、これらの要件に該当しなくなった場合には、患者の意思と別で個室に入り続けることがないように改めて同意書により患者意思を確認することになっているため、その点も注意しておきたい。
これらについては、各県のHPでも公開されているし、厚生労働省からも通知として示されているため、詳細はそちらを参考にしていただきたい。ちなみに埼玉県のHPがわかりやすかったため、そちらのリンク先を以下に掲載しておく。
入院時の手続きの落とし穴
実際に私も体験したことであるが、この差額ベッド代について重要なことが「患者が希望」した場合という点である。私の場合は、今年妻が急遽入院することになって、病院から「昨今の情勢から、感染していないか確認できるまで個室に入ってもらう。その期間はPCR検査結果が出るまでのため2~3日です。」と言われ、同意書にサインを求められた。
感染症対策のため、もちろん1人部屋だが、1日あたり15,000円程度した(3日ならそれだけで45,000円)。非常に体調が悪い妻に説明し、妻は何でもいいから横になりたいという状態だったためサインしそうなタイミングで、私が病院に到着した。
私もなんとなくこのルールをかじった程度で詳しい要件を知っていたわけではないため、希望していなくて、病院側から求めているみたいだけど費用負担しなければならないか?と単純な疑問として聞いた。詳しく説明してほしかっただけにもかかわらず、あっさり費用は掛からないと言ってきて同意書を撤回してきたのである。同意書も「私(患者)は個室に入りたいです」みたいな書式になっていて、あとで書類を見たら患者が希望したように見えてしまう。
払わなくてよい場合があるということを知らないと、希望して個室に入ったようにされて請求されてしまうため、知識としてぜひ知っておいていただきたい。
最後に
最後に一言付け加えておく。
あくまで、この差額ベッド代は患者が負担することが原則である。何が何でも払わないようにごねてはいけない。特に個室が良いと考えている場合はしっかり費用を負担しよう。
一方で、もし仮に大部屋でも良いと考えていても病院の都合(部屋が空いていない等)とか、感染症などで大部屋が無理な場合などは一言確認してもよいと思う。
自分が体調が悪くて入院するわけだから、その場でいろいろ考えることは難しいと思うので、普段からこういった知識についても「そういえば何かあったな?」くらいで良いので身に着けていただければと思う。
まだ記事は少ないが、国の保険制度について特に一般の方が関連しそうなものをまとめていくため、こちらも参考にしていただきたい。
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