日本は海外と違って、国が運営する医療保険制度が充実していることは、本ブログでも何度か紹介してきた。
そんな中で、今回は不妊治療について取り上げる。
今までは優秀な日本の制度であっても、不妊治療は医療保険の中でできないことがたくさんあった。しかし、2022年4月から保険適用での不妊治療を受けることができるようになったことから、その内容について解説する。
非常にセンシティブな内容ではあるが、気になっている人も多いであろうからぜひ参考にしてほしい。
なお、過去に紹介している記事も併せて参考にしてほしい。
概要
なぜ今不妊治療についてフォーカスされ、今回制度が見直されたかを簡単に説明する。ここは背景情報であるため、結果だけ知りたい方は次の項目(過去から保険適用だったもの)に飛ばしていただければと思う。
少子化社会対策大綱
令和2年5月29日に内閣において閣議決定された少子化対策として、この「少子化社会対策大綱」がある。この決定には、少子化対策の一環で不妊治療の負担軽減として経済的負担の軽減が掲げられた。
経済的負担の軽減として、以下の2点(助成と保険適用)がメインで挙げられた。
・適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険適用し、支援を拡充
これを踏まえて令和2年から本格的に検討がスタートした。
菅内閣の基本方針
同じく令和2年において、菅内閣は9月16日に「少子化に対処し安心の社会保障を構築」を打ち出した。
この方針には、少子化対策は「喫緊の課題」とされ、誰もが安心できる社会保障制度を構築するため改革に取り組み、以下の環境を作るとしている。(どこまで実現するかなんとも怪しいし、何なら岸田内閣になって、制度の不公平感が増している気はするが…)
・保育サービスの拡充・待機児童問題を解決
・安心して子どもを生み育てられる環境
・制度の不公平・非効率を是正し、次世代に制度を引き継いでいく
全世代型社会保障改革の方針
さらに同年(令和2年)の12月15日には、標記の「全盛台型社会保障改革の方針」が決定され、以下の具体案が提示された。
・保険適用までの間は現行の不妊治療の助成制度について、所得制限の撤廃や助成額の増額(1回30万円)等、経済的負担の軽減を図る
・不育症の検査やがん治療に伴う不妊についても、新たな支援を行う
過去から保険適用だったもの
堅苦しい前置きはさておき、ここからは実際に保険の範囲で何ができるのかを解説していく。
まずは今までも保険の範囲でできたことをまとめる。逆に言うと今までも保険適用だったものは以下の2つだけであった。
①検査(原因検索) | 検査結果以下の3つに分けられる | ||
・男性不妊 | |||
・女性不妊 | |||
・原因不明の機能性不妊 | |||
②原因疾患の治療 | 男性側 | 精管閉塞、先天性の形態異常、逆行性射精、造精機能障害など | |
女性側 | 子宮奇形や、感染症による卵管の癒着、子宮内膜症による癒着、ホルモンの異常による排卵障害や無月経など |
この表を見てもらうと、何かの疾患があればその治療は保険適用になるが、原因が分からない場合や、タイミング法、人工授精など妊娠させるための手法には保険が適用されないということである。
参考:厚生労働省HPの以下のスライド
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911818.pdf
新たに保険適用となったもの
2022年4月から新たに保険適用になるのは以下の通りだ。今までは原因が明確ではない場合などは保険適用にならなかったが、この点が大きく変わったと言える。
一般不妊治療 | タイミング法 | |
人工授精 | ||
生殖補助医療 | 体外受精 | 現時点でも助成金あり |
顕微授精 | ||
男性不妊の手術 |
以下に厚生労働省が作成したスライドを張り付ける。
引き続き保険適用外のもの
2022年4月から不妊治療の多くが保険適用になったが、引き続き適用外のものもある。
それは「第三者の精子・卵子等を用いた生殖補助医療」である。これについては、別途規制があることから、そっちの検討があるため現状は保険適用外であるようだ。
まとめ
まだ保険適用外のものはあるが、多くの方法が保険の対象となったことは、現在不妊治療している方には朗報だろう。
実際にやる際には担当の医師に相談する必要はあるが、是非確認してみてはどうだろうか。
参考:厚生労働省HP(令和4年度診療報酬改定説明資料等について)
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